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墨絵講習会を開催しました2015.12.10

今回の墨絵のマスタークラスで講師を務めて頂いたのはNHK学園講師、山梨文化学園講師である竹澤美知代先生です。先生が弊社の墨絵マスタークラスの講師として初めていらしたのは2012年。それ以来数年に渡り度々モスクワに来て頂いて、マスタークラスの講師を務めて頂いています。

今回の墨絵マスタークラスでは各回違った題材を取り上げ、期間中に計7種類の墨絵のレクチャー行われ、テーマはライラックの花 (顔彩という絵具を使用)、(F6又はそれ以上の大きいサイズの紙を使用)、歌舞伎演目から暫(顔彩と色紙を使用)、門松と注連飾り (顔彩使用)、三段の滝雲の中の富士山 (胡粉という絵具、F6又はそれ以上の大きいサイズの紙を使用)、富士山と桜 (顔彩、F6又はそれ以上の大きいサイズの紙を使用)、でした。

マスタークラスは弊社会長の挨拶から始まり、次に竹澤先生が絵について説明しながらお手本を描いていきます。その後生徒さん達もそれを見ながら真似て実際に絵を描いていきます。この間の室内は異常な程の静寂に包まれ、音といえば墨を硯で削る音、半紙の擦れる音や筆を洗う時に聞こえる水の音位で、集中と熱心さが手に取ってわかります。実際に使う道具も墨は薄墨、中墨、濃墨、必要な際に使う顔彩、胡粉、極細な物から太いものまである何種類もの筆を使い分け、皆さん本当に集中して墨絵を描いていました。

授業後半になると、竹澤先生が実際に生徒一人ひとりの作品を見て回り、全員にそれぞれ的確なアドバイスや実際に筆を入れたり等されました。全員分見終わった後は生徒さん達の描いた作品をボードに並べ、一度に全体を見て先生から最終的な総評などがあり、1回2時間のマスタークラスは休憩も取る事無くあっという間に終わりました。

マスタークラス期間中に竹澤先生とお話できる機会がありましたので、少しインタビューさせて頂きました。

インタビュアー:先生は既に何度かこちらでマスタークラスの講師を務めていらっしゃいますが、ロシアの人が描く水墨画と日本人が描く水墨画には先生の目から見て何か違い、もしくは同意点などの印象はありますか?

竹澤先生こちらの方 (ロシア人) の方が、色んなタイトルね、取る題材がとっても私は面白いと思って、共感はあるんです。日本人の方ってどちらかと言えば水墨画自体が保守的なんですよ。でもロシアの方は水墨画で何でも描こうというような、結構意欲的なのね。えー、っていう面白い題材も結構取って下さるので私も勉強になるの。だから凄い楽しみなの。

インタビュアー:マスタークラスの生徒さんの中には沢山常連の方もいると聞きましたが、国は関係無くやはりそういう方がいると教えがいがありますね。

竹澤先生:勿論!国は関係無い。凄い楽しみ私は。

インタビュアー:ちなみに先生は何度もロシアに足を運ばれていますが、ロシアの国自体の印象はいかがですか?

竹澤先生:あんまりここから動かないからわからない (笑)。でも日本もそうなんだけど、ここは独特なね、古い建物と新しい建物がミックスしてますよね。その辺がね、もっと日本よりも大陸的というかのびのびとした感じで凄く良い印象を持ってる。

インタビュアー:先生にとって墨絵とは何ですか?

竹澤先生:ロシアの方なんか特に皆さん仕事を持ってらっしゃいますよね。日本の場合は仕事を離れて一段落した定年退職者って言うんですか、そーゆー方がやるのが圧倒的なんですよ。だから、日本で言うと墨絵は意外と趣味の世界。それに比べてね、こちらの方は教えていると物凄く意欲的なの。熱心だし。だからね、日本人の私としても頭が下がる思い。墨絵をもっともっとやりたい方もいるでしょうし、場所を問わず多くの人に学んでもらいたい日本の文化の一つかな。

インタビュアー:最後に一言お願いします

竹澤先生:何でもそうだけども、仕事を持っていてこうゆう水墨画とかを習ったりするじゃないですか。それはね、要するに現実から別の世界に入って夢中になれるところ。そーゆーのって仕事をしてる人にも大切な事だと思うの。ずーっと朝から晩まで仕事して家に帰って寝ますよっていうのも良いかもしれないんですけれども、何かしらね、そこで別の仕事と全く関係の無い社会に飛び込んで夢中になれるっていうのも、逆にね、仕事に一生懸命になれる事だと思う。日本人だ、何人だというよりもっとね、水墨っていうのは一つの精神の世界なのね。だからそーゆーのは私も大切にしていきたい。最初こちらに来た頃はね、ここまでね、休憩も取らないでやる位でもなかったんですよ。だけど今皆さんとっても夢中になってその時間大切に描いて下さるし、とても嬉しい。

竹澤先生、素敵なお言葉有難うございました。